人生をつかむ不倫願望
不倫願望が人生を変える。そんな恋愛があってもいいじゃないか?
ふと、そんなことを思う。不倫相手との思い出。
愛華との思い出は、一晩じゃ語り尽くせないほど、ある。
「俺と別れてどうするつもりだった?」
「私が他の男にホイホイとついて行くと思う?」
「いや、思ってないけど。」
「今までは、なにしても、どんな手段を使ってでも欲しいものは手に入れていた。でもね、義男ちゃんと付き合うようになって考え方が変わった気がする」
「……? 俺と付き合った結果、考え方が変わったの?」
「そうだよ。ホントに欲しいモノは簡単に手に入れられないからこそ価値がある。それには努力だったり根性だったりって古くさいことを信じて実行しないとダメだ、、、義男ちゃんが、今の環境を手に入れたみたいに」
「それだけじゃ、手に入れられなかったと思うよ。あとは、愛華がいたからいろんなことができたんだ」
「ただ不倫がしたかっただけじゃないの? 不倫願望のはけ口として、たまたま私と出会っただけでしょ? わたしって、そんなに価値がある女なの?」
「二束三文の俺の人生が、おまえと出会って何億倍もの価値のある人生に変わった。それだけじゃない。俺は小さい頃から興味のなかった、愛とか愛情とか、なんだか生暖かいものにも凄く興味が出てきた。それも全て愛華の存在があったからと思っている」
「ふーん、私も同じかもね。出会った頃は、人生なんてどうでもよかった。不倫…? 知らない人と寝ることだって、お金の為なら平気だったし、恋とか愛とか結婚とか、そこらへんの女子連中が熱上げてることなんて興味もなければ、そもそも自分には無縁。だから人を愛するなんてこの先、あるわけがないと思ってた。けれど、義男ちゃんが『愛華の為に出世して頑張る』って言ってくれたことで私も変わろうと思えるようになった。感謝してるよ、心の底から……」
『感謝』かー……
愛人からそんな言葉を受け取ったとき、全身の力が抜けていくようだった。彼女との約束は自分の人生を賭けたもの。彼女が愛人であろうと恋人でなかろうと自分が既婚者であろうと、まして、そもそもが不倫恋愛であったとしても、妻を差しおいて愛人のために男の人生を賭ける…この罪深さは、まさに妻への罪であろう。
だが、全否定されてもかまわない。この女のためなら「人生に負けない気がする」そんな気持ちになってしまったのだ。この女とは、不倫相手であり愛人であり、妻ではない。