二人の愛人が顔合わせした日

今日も朝から雨が降っていた。
愛華が私の所に来てから天気が不安定だ。朝起きてからも雨なので…
「布団も干せないね」
掃除が好きな愛華にしてみれば不機嫌な材料が揃っているかのように呟いた。
「じゃ、どこか出掛けようか?」
「まだ、そんな気分じゃないなぁ? 明日以降にしない?何処かに行くのは・・・」
恋美とサトミに会ってからじゃないと気分が乗らないらしい。

以前、約束した通り
今日の午後に恋美に会うことになった。
待ち合わせ場所は恋美が指定した元麻布にあるワインBarだった。
待ち合わせ場所に向かって電車に乗っている最中、愛華はほとんど言葉を発しなかった。
予定より30分ほど早く着いたが、恋美はすでに来ていた。
恋美が私達に気づき、スッと席から立ち上がりやや緊張した顔で軽く頭を下げた。愛華もそれに応えるかのように軽く会釈をした。
「早かったね、彼女が愛華…で、彼女が恋美」
なんだか自分の愛人を二人、会わせるなんて罪深い男だ?

「初めまして愛華さん。今日は私に会ってくれてありがとうございます。義男ちゃんから、いつもお話聞いてます」
「ごめんなさいね、急に恋美さんに会いたいって言って。でも、どうしても会っておきたかったの」

昼食がまだだった私達は食事をすることになった。
「どうしても愛華さんにここにあるワインを飲んで貰いたかったから・・呼び出してしまいました」
「ありがとう。ワイン好きだってこと義男ちゃんに聞いたの?」
「そうです。実はここは義男ちゃんにも教えてなくて私の隠れ家的な場所で」
「何で教えてくれないの?」
「女にも生き抜き出来る場所が必要なのよ」

――その後、愛華と恋美は世間話や仕事の話で盛り上がっていた。一方、私はもっぱら聞き役に回ってしゃべるスキが無い。

「愛華さん、一つだけ質問していいですか?」
「何でも聞いて」
「義男ちゃんとの関係を終わらせるつもりですか?」
「終わらせるって考えるほど彼との関係は悪くないから・・でもね、今までは彼から愛される事が当たり前だったの、最近は愛してあげたいって思えるほど彼の存在が変化してきた。これってきっとあなたの様な人に巡り会えたからだと思っただったら、その人に会ってみようかと思って今回ここに来た本当の理由はそれなの」
「あと……私の存在は否定しないのですか?」
「人間って誰かに愛され愛す事で成長すると思う。この人の場合、自分の利益を考えた付き合いは出来ない人だから、きっと恋美ちゃんのことも私同様に色々と考えているはず。大切にしてくれるでしょ?」
「いろいろと考えてくれますよ、真直ぐに私を見てくれますし」
「でしょ?でも時には連絡してこないで一人でどこかに引きこもって心配させるけど…ね?」
「男にも隠れ家が必要な時もあるんだよ!」
「言い訳しないの!」
2人は同時に同じことを言って笑いあっていた。

愛華の目的が分かった私は、なんだかホッとした。恋美は真剣に愛華と私の関係を心配していたみたいで会話が進むにつれ硬い表情からいつもの優しくおっとりした表情へと変わっていき、最後は楽しく3人で旅行でも行こうかと…冗談のような真剣な計画話しをするまでになった。

恋美は次回、札幌に行ったとき愛華の家に泊まる約束までして具体的な日程話までしていた。帰り際、恋美が私にそっと…
「義男ちゃん、よかったね!愛華さんが居る間はしっかり接待するんだよ! でも…あんまり甘えすぎないでね。それと帰る日が決まったら連絡してね。愛華さんとご飯食べに行こう」
「恋美、今日はありがとう、やっぱり恋美は凄いよ」
「なんか‥愛華さんって人は全てを見透かしてる気がする。だから私は自分の気持ちに嘘をつかずに言っただけ」
私が愛華と最初に会った時に気づいた印象は恋美にも同じことを思わせたみたいだった。

恋美と別れて歩いてる時、愛華は、
「恋美ちゃんって、前はあんな人じゃなかったでしょ? きっと義男ちゃんが強くさせたたんだと思う」
「俺が?変えてもらったのは俺のほうだよ」
確かに…恋美は出会った当初、泣いてばかりいる女の子だった。就職が決まらず、将来の夢も持てない感じでいた。その寂しさから逃げるように誰かに抱かれて自分を慰めていた女の子だった。
でも今は仕事に対しても人生に対しても私にも真直ぐと見つめ、そして歩いている。

変わっていく恋美を間近で見ている今は、とても素晴らしい女性になったと思う。それを感じているだけでも私の方も気持ちが充実してくるようだった。

駅に着くと雨はもう止んでいたが、相変わらず分厚い雲が立ち込めて、いつ降ってきてもおかしくない状況だった。

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