三人の不倫相手 いちばん失いたくない人

複数の不倫相手がいる場合、そして、それぞれの不倫相手にその事実を公開している場合なんてのがある。つまりはこうだ。愛華にも恋実にもサトミにも愛人は君だけではないと公言しているのだ。


もちろん、通常の恋仲ではないので彼女たちも必要以上の嫉妬は焼かない。むしろ、この男にぶら下がっている女は、自分以外にどんな女なんだろう? なんて興味心に包まれるだけの話。

――愛華が東京に来るとの連絡が入り、「2人の女性に会わせて……」と愛華が望みを果たすために恋美とサトミにその事を話しに行ってきた。

「来週の木曜日に愛華がこっちに来ると連絡があった。それで恋美に会いたいって言ってるんだけど会ってくれる? 勿論、俺と恋美と愛華の3人でなんだけど」
「ホントに?実は私も愛華さんに会いたいと前から思ってたの。その日は色々と聞きたい事があるし」
「じゃ、時間と場所が決まったら連絡する」
「ねぇ、ひとつ聞いて言い?」
「なに?」
「愛華さんって、何で私に会いたいの?もしかして私に会って確かめたいことがあるのかなぁ? 何か聞いてない?」
「愛華は自分の気持ちを確かめたいんだって言ってた。恋美に会うことで本当の自分の気持ちを知りたいらしい」
「本当の気持ち?知った後でどうするの?」
「今まで通りの付き合いか、別れるかの判断をするみたい」
「そんな…」
それから恋美は黙ったまま何かを考え込んでしまった。

長い沈黙の後に、恋美が小声で
「義男ちゃんは本当にいいの、それで?」
「どうしたの、突然??」
「愛華さんは、きっと義男ちゃんと別れるために東京に来るんだと思う」
「俺も、そう思う。愛華なりに自分にケジメを付けるために来るんだと思うよ」
「でも…義男ちゃんは本当にそれでいいの?」
「いろいろ考えたんだけど、そろそろ愛華は俺の思いから解放させてあげないとダメかな?って」
「そうかな? 男だって、泣いてすがって『別れないでくれ』って言ったっていいじゃない?今の義男ちゃんは変だよ。愛華さんをあんなに大事に思ってたくせに。自分に卑怯になってる。らしくないよ…」

たしかに、愛華のことになると自分でも訳が分からないほど怯えたり卑屈になったりした。恋美やサトミには申し訳ないけれど三人の愛人の中で一番失いたくない存在なのかも知れない。

しかし漠然としているが、あの時の愛華は確実に私との関係を終わりにしたいと思っていたのかも…この時の私には、この程度の発想でしか悩めないでいた。


いつもと変わらぬ風景が、今日は何だか違って見えた。羽田空港で丸い柱に背をもたれながら彼女の姿だけを探していた。
やがてゆっくりとこちらへ向かって歩く音がした。その足取りは、何かを決意してきたかのような感じだった。

「迎えに来てくれたの?ありがとう」
「だって、横浜の俺の家、知らないでしょ?」
「実はその事で、これから電話しようと思ってたとこ…助かった」

お互い肝心なトコは打ち合わせせずにいたのがなんだか可笑しくなり笑いあった。今回は私のマンションに泊まる予定でいたが、いつ帰るのかは愛華は言わなかった。

愛華が予定を決めないで行動する事は珍しいが気の済むまで居てもらっても構わない。しかし、こんなのは初めてなので妙な気分だった。

「これからの予定だけど、どこか行きたい場所ある?」
「義男ちゃんの会社引越ししたんでしょ?」
「挨拶状届いたと思うけど…見てくれたんだ」
「そりゃ見るに決まってるでしょ? 一度見てみたかったんだ、義男ちゃんの会社を」
「それじゃ行ってみる?」
「うん!」

青山に向かった。
愛華と2人で、あらためて会社のビルを見上げると昔の思いが私を包み込んだ。
この会社は、私だけの夢を叶えるためだけに起こしたものではない。愛華と出会い、彼女との未来を夢見て今出来る事の最短の道を探った結果がこれだった。

一人の女性との約束。
「義男ちゃん、出世してね」
その言葉のためだけに必死で頑張った結果がこの会社であり、その御褒美が、今隣で一緒にいる愛華との現在なのかも知れない。随分と早足で走り続けたが何も後悔はしていないつもりだ。

例え、彼女を失ったとしても私は絶望を感じず、翌朝から当たり前の様に歩き続けるだろう。それは、愛華の存在があったからこそ身に付けられた勇気みたいなモノなのだ。

実際、10年以上も愛華の事を好きでいれば誰でも身に付けられると思う。しかし今はそれを私だけが感じて私だけが使いこなせるアイテムみたいで嬉しくなってくる。
男に勇気を与えてくれる女性。愛華はやっぱり凄い存在だ。

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