専務の愛人の艶めかしさが一気にはがれてしまった理由

背中の大きくあいたセクシーなドレスをまとう女。そして、女をエスコートする男。
ふんだんに金をかけた食事に派手なシャンパンタワー。濃厚な贅沢が満喫する時間を漂うように過ごすセレブリティー。ああ……この場の空気っていったいどうなってんだ?


とあるビジネスパーティーの会場。一歩下がって見渡せば、商機をうかがう〝思惑〟だけが錯綜しているとも見て取れる。

ずいぶん前に、愛華から紹介された女性がいた。関係は「友だち」だと言っていたが、その女性に、このパーティー会場で偶然、再会したのだ。

「お久しぶりです、私を覚えてます?」
「勿論です。随分と御無沙汰してました。お元気そうですね?」
「義男さんもお変わりなく…愛華とは連絡取り合ってます?」
相手が美女であるだけに、愛華との愛人関係がまだ続いているのですか? と言わんばかりの質問には独特の艶めかしさを感じてしまった。


「今日、札幌に来ることは伝えてますが、彼女のスマホがちょうど留守電だったもので……」
「そうですか・・・義男さんって今日はVIPなんですね?」
「どうしてですか?」
「だって…」

彼女に言われて気づいたが、ほとんどのパーティーにはビジターを何かしらの形で差別化する風潮がある。
それというのも、立食形式とは言え、案内係の人に招待状を見せると各テーブルに誘導案内されるからだ。ここですでに差別化されているわけで、テーブルによって階層をわけているのだ。会場には目には見えないパーテーションが設けられていて、パーテーションの右か左か、どちらに案内されるかでビジターランクがつけられている。

彼女との会話が続く……
「聞いた話では、年商別と、この会社への貢献度で複合判断しているそうよ」
「へえ…内情にくわしいけれど、この会社の関係者なんですか?」
「ちがうの…私は、専務の愛人なの。だから知ってるの」
「でも、私の会社との取引は弱いだろうし、年商だってそんなに…」
「そうじゃなくて…、義男さんの会社が持っている海外企業とのパイプが魅了的なのよ」
「それも、専務から聞いたの?」
「さぁ? 想像におまかせしますよ。あっ…きたわ、私のパパと社長が」

専務と社長が私の方に近づいてきた。
専務は社長になにかささやきながら歩いてくる。専務はいかにも欲のかたまりといった中年男性。この中年が、あれほどの美女を好きなようにしていると想像した瞬間、なんだかやるせなくなってしまった。ふと気づくと向こうのテーブルに行ってしまった彼女の後ろ姿が見えた。腰のすぐ上まで素肌が見える赤いドレスの後ろ姿…。淡く真っ白な肌が必要以上になまめかしくてたまらない。


「これはこれは、ようこそいらっしゃいました。かねてからお目にかかりたかった人だ」
「いつも、弊社がお世話になっています。今晩はお招きに預かり有難うございます」
「海外投資も順調だと聞いています。我が社も海外とのコネクトを探っているんですよ……」

彼女の言ったとおり、この専務の思惑が見えた。それにしても、愛人相手に企業戦略をペラペラとしゃべるなんて、案外、低次な人間だと感じずにはいられなかった。


なんだかつまらない…。ビジネストークがだ。
それよりも、向こうに行ってしまった愛華の友だちが気になって仕方がない。こんな専務の愛人だなんてもったいないほど〝いい女〟なのだ。

とはいえ、深追いするのも不毛なので、この場を退場することに決めた。ただし、彼女には、パーティー会場を出ることが〝わかるように〟部屋を出ると階下へとエレベーターまで歩いていた。すると……

「もう帰るんですか? 良かったら、少しお時間あります?」
「あっ、ばれました?どうも、この様な場所が苦手でね」
「じゃぁ、一緒にフケません?」
「専務の方は大丈夫なの?」
「いつでも会えますし…」

彼女は、専務の代わりに私から情報を聞き出そうとしている?
そのためには誰とでも寝る女なのか?
専務の思惑を引き継いでアプローチしてこようとする彼女。

ふと我に返ると、さっきまで気になって仕方のなかった彼女の色気が、飼い猫のような古典的な愛人の振る舞いをみせられて‥一気に薄っぺらいキャバ嬢程度の色気に成り代わってしまっていることを感じていた。

このまま彼女とホテルに行ったところで、この冷めた気持ちが再び火照ることはないだろう。そんなことを考えた私は「ごめんなさい、やはり機会があればまたということで…」と、足早に立ち去った。

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