彼女は結婚できない恋愛であることを最初から知っていた

東京のホテルラウンジで、すごく幸せそうな男女に出会いました。
仕事の打ち合わせを済まして、ガラス張りの向こうに見えるビルを眺めていると、近くから男女の話す会話が聞こえてきてしまいました。
「式はココに決めない?」
ホテルマンに案内されやってきた男女が、幸せに包まれながら未来の自分達について語っていたのです。その光景は、今の私にとって微笑ましい存在でした。「幸せになってね……」

――今から1年前。私のもとから去った女性がいました。彼女は、私が抱えた悲しみも喜びも同じように、そして、自分のことのように悲しみ、また喜んでくれました。彼女との時間は楽しかったし尊いものでしたが、いつも恐れていたのは「別れ」でした。
そして、別れは突然やってきました。


ここで婚外恋愛の〝別れ〟について、体験的ストーリーを書き留めておこうかと思います。――当時付き合っていた彼女が、不意にこんなことを口にしました。

「義男ちゃんといても、未来が見えないの、未来が」
正直、その言葉の持つ意味は理解していますが 、結婚している今の私には解決する術がありません。彼女が私との付き合いを考えた時、その真剣さは私の思いとは比べ物にならないのでしょう。真剣さ…それはつまり、わたしが離婚して奪略婚を真剣に考えていた彼女の心理です。

他方、私は…?
彼女を真剣に愛していますし「これからだって愛している」と口にしても、彼女にとっては離婚して自分と再婚しない以上、これからも愛しているという言葉は、約束ではなく言い訳でしかなかったのです。

現実問題として彼女の望む理想の幸せの形=結婚をかなえてやることなんてできないのです。いや、それは格好をつけすぎでしょう…離婚して不倫相手と再婚する勇気がなかっただけなのです。

もちろん、不倫をしているから、普通に恋愛してる人よりかはリスクを感じていたつもりでした。不倫にはリスクがある。その通りでしょう。しかし、そのリスクは私自身では無くて彼女自身にあるのだと言うことを知らされました。

既婚男性と、若い独身女性が不倫関係にある場合、既婚者の家庭崩壊というリスク以上のリスクとは、女性の人生の時間を奪ってしまうところにあります。

自分のような男と薄暗い恋愛に費やす時間があるのなら、もっと他の若い未婚男性と健全な恋愛を楽しんで、
結婚や子育てという、女性としての平凡でも尊い〝しあわせ〟を得るために時間を費やすべきでしょう。

なのに、私のように結局は「家庭に帰ってしまう男」と恋愛を続ければ続けるほど、彼女の女としての人生は短くなってしまいます。それが、既婚男性との不倫による最大のリスクです。

もっとも、リスクを帳消しにする方法はひとつだけ存在します。略奪婚です。そう……もしも私が、妻と離婚して彼女と再婚したならば、彼女にとってはこの不倫から幸せを得る結果を手にすることでしょう。けれども、その見込みがないのなら…女性は、男から〝あきられれば〟捨てられるゴールが待っているだけです。

それまで、身勝手な恋愛ポリシーで彼女と不倫していた私は、「結婚している自分」にリスクがあると思い込んでいた分、とても恥ずかしくなりました。 それと同時に、彼女への罪悪感で悲しくもあり…。

彼女は私に言いました。
「義男ちゃんは大好き。でも自分のことも好き。自分が好きな分、自分に未来を与えてあげたい」
そのとき…私は彼女に返事ができる言葉を必死にさがしていました。
「君の未来は、自分自身と君を大切にしてくれる人で彩られるべきものだ。だから……」
私には、だから……に続く言葉が出てきませんでした。いえ、その先の言葉を言うのが怖かったのです。

「俺と別れて、君を大切にしてくれる人のところに行きなさい」
彼女は静かに私の手をとると…
「私をお嫁さんにして。奥さんと別れて。大好きな義男ちゃんとずっと一緒に居たいの」
彼女がそう言い終わった後、心の中で激しく動揺している私は言葉を見失いました。そんな私を悟ってか、彼女は、そっと手を離し…
「最初からムリなことは知ってたよ、最後に困らせてあげようかと思ってさ…」
「好きな人、できたの?」
「ちょっと違う、好きなのは義男ちゃんだけよ。でも私と結婚したいって言う人がいるの。その人、『君となら未来で起こる嫌なことも楽しく変えられそう』って言ってくれたの」
「それってプロポーズじゃん」
「そうだよ。2人でいれば未来を変えられるんだよ。すごくない? だから、今日でサヨナラだね。私は行くよ、その人のトコへ。まだ霧で向こうは見えないけど、その人は私の欲しい未来をくれそうな気がするの」

今でも忘れません。言い終えた彼女は、とても綺麗で優しい表情でした。
「さよならだね……」
きっと彼女は、私と会うたび抱かれるたびに、それを言うタイミングを見失っていたのでしょう。

それは、彼女にとっての未来への扉だったのです。入らなくてもよかったはずの薄暗い部屋…入ってしまえば、不倫という名の、激しく燃え上がるだけの、ただそれだけの…見返りのない愛。いつかこの部屋を出て、真白なカーテンからまばゆい光が差し込む〝しあわせ〟という名の部屋に向かい歩き始めなければならないのに「お願いだ、もう少し私とここにいてくれ…」と、男の欲と都合だけで彼女をひきとめていた私。

せめて……
未来への扉は、私が開けて「さあ、これから君はここでしあわせになるんだ」と、光に目をくらませる彼女の背中を押してやるべきだったのに。

最後に未来への扉を開けたのは、私ではなく彼女でした。


ホテルのラウンジで見かけた幸せそうなカップル。
つい私は…昔の不倫相手を重ねてしまい、「幸せになって欲しい」と、心の中でエールを贈るのでした。

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