女ではなく仕事に頑張れるのが〝いい男〟

いい男の条件、これについてひとつの回答を得た気がした。

なんだそれは?さっぱり意味がわからないとどやされそうだが…上海に赴任する前に愛華から言われたひと言に「自分の出世のために頑張って欲しい」…がある。
愛華はきっと、私のような女にうつつをぬかすのはそろそろやめにして、自分の人生を生きて欲しいと言いたかったはずだ。

タトゥーが物語る悲しい人生を生きる19歳の〝女〟そんな彼女は私以上に生きることの苦しみを「知っていた」
「女のためにがんばるのではなく男として自分の人生を成功させるために必死になれ」そのような意味を込めて、愛華は私に別れを告げた。

さらに、私と別れて〝いい男になれ〟と意味を込めたとも思える。


この、愛華のわかれゼリフを、とある機会に別の女性からも聞かされてしまった。つまり、その女性もいい男の条件は「自分の人生のために頑張る」ことであった。
このことは、女から見れば〝女のためにがんばる男〟に魅力はないらしい。なるほど…そう言われてみれば、ハッと我に返る気にならぬでもない。


――海外赴任が決まり上海に飛んだ。赴任当初の私は、この異国の地で仕事を大成させ、組織の中で出世し、そして「もういちど愛華に会いにいこう!」と、ただそれだけを思い、この地にやってきたはずだった。

しかし、何不自由ない上海での暮らしは、私の決意を軟弱にしていった。三つ星ホテルに滞在し、出勤はタクシー、食事は全額経費で落とし、自分の財布からお金を払うことなど無いに等しかった。しかも言葉がわからない私の為に、専属の通訳の中国人女性(当時21歳)が色々と面倒をみてくれた。

休暇の日は、中国の観光地や高級料理店に彼女を伴って出かけ、公私共に充実した日々を過ごしていた……ところが、着実に私の決意は心の隅に追いやられていった。

ある日、仕事帰りに、身近なスタッフを連れ食事をしに行く事になった。日常会話程度の中国語をマスターした私は、彼らと冗談を交えながら会話しつつ、美味しい食事とお酒に満足していた。いつも頑張ってくれる彼らの食事代ぐらい自分で払おうとして財布を開けたとき、小さな黄色の紙を見つけた。たまらなくなつかしい匂いと、あの時の感触が意識の中にはっきりと感じ取れた。愛華から受け取らされた〝わかれ〟を意味する黄色いメモ切れだった。

――スタッフとの食事会の後、帰宅する者、飲みに行く者がいて食事会は解散となった。私は通訳の彼女と行きつけの外国人Barに向かった。そこで彼女に、こんな質問をしてみた。「この世の中に、惚れた女の為に、自分の人生を変えようとする男って、君から見てどう思う?」するとこんな答えが返ってきた。
「カッコイイデスヨ。デモ、アイテノタメデハナク、ジブンノタメニガンバルオトコハ モット、カッコイイデス。ソレガ、イイオトコ!」

ドキッとした……。
彼女の言葉は、いつの日か聞いた愛華の言葉を思い出し、最初の志が狂い始めていた自分をののしっているようだった。

さらに訊いた……
「君にとっての〝いい男〟はいるの?」
「ハイ、フタリ、イマスヨ。ヒトリハ、カレシデモウヒトリハ〝ヨシオ〟サン!」
彼女は物怖じせず、真っ直ぐに私の目を見て言った。何だか、嬉しくも有りちょっぴり恥ずかしくもあり……私は決心した。
「来週の連休に日本に帰る」

彼女は、微笑みながらうなずいた。頭の良い彼女の事だから、きっと私の質問の意味と、帰る事の意味が判ったのだろう。
私の通訳をしてくれた彼女は、今や大切な当社の副社長であり、公私共に信頼できる私の友人の一人でもある。彼女は大切な事業戦略会議や社員達への訓示では必ずこんな事を言う。「全ては終わりを迎えない、全ては永遠である。物事に終わりは無く、自分が終わりと感じていたとしても、後になると必ず思い出として心に永遠と残っていく。だから後悔しない思い出を作るためにも今、最善の力を尽くすべく進もう」

私が日本へ一時帰国する際に、見送りに来てくれた空港でも、彼女は同じ事を私に言ってくれた。そしてこの言葉は後に、私に独立へと導くキッカケとなった言葉の一つです。
あの時の言葉、ありがとう。

そしてもうひとつ……いい男とは何ぞや? それを教えてくれたあの時の言葉にもありがとう。自分の為に頑張ることが愛する女性のために頑張ることなのだ。

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