彼女の仕事は自分を愛してもらう仕事
運命的出会いであろうか? 彼女に興味を持ち出したのは、きっとドア越しに見た彼女の瞳を見たときからだ。
今の自分の気持ちや行動までも見透かすような瞳、現実のみを直視している瞳。限られた時間の中で、自分を愛してもらう仕事をする19歳の彼女だった。今でも彼女を軽く抱き寄せると、いつもあのときの時間にフィードバックする。ずっと抱きしめていたくなるほどの恋愛感情に……。
限られた時間の中での恋愛、その柔らかな肌に触れ、彼女の激しさとなまめかしさに全てを忘れ、ただ躍動のときを刻んだ。時折、彼女は私にギュッと抱きつき小声で「好き‥」とつぶやいた。それは確かに私の耳に届いたが、確かめる言葉を口にする余裕はなかった。ただ彼女を今以上に両手で強く抱きかかえ、なぜだか「このまま離したくない」そう思える一瞬と同時に快楽の深みと落ちていった。
そして静寂――。脈打つ感情を抑え、あえて冷静に切り出した。
「また、会えるかな?」
「指名してくれれば会えるよ、でも、この仕事って若い子にニーズがあるみたいだから、私もそれなりの年齢になったら…」
「でも、まだ19歳でしょ?大丈夫だよ!」
何を励ましたのか? 何を応援してるのか? こんな言葉で、場を乗り切ろうとした自分が情けない。
「ねえお客さん、大きな会社に勤めてるんだよね? そこって楽しい?」
彼女はサラリと、今、もっと回答しづらいことを聞いてきた。
「じゃ、君の仕事は楽しいの?」
「うん、仕事だったとしても、ほんの一瞬でも、自分を愛してくれていると思ってるから。私も愛したいし…そういう意味では楽しいかな。」
「確か、さっき「好きって」言ったのはそういう意味なんだ」「――でも、好きだよ。あのドアを出るまではね」
「当然、ギャラも良いと思うけど ずっと続ける仕事じゃないよね? 将来、いい男が現れれば結婚もしたくなるだろうしさ、本当の意味で愛してくれる人に出会う時が来るんじゃないかな?」
「お客さんって、結構、普通の会話好きだよね? せっかく出会えたんだから、もっとエグイ話とかしてもいいのよ。」
「………」
「でも、普通が1番だよ!普通が‥」
普通かぁ? ただ会社や上司に言われるままに仕事をするだけの人間が普通なのか? 空を見つめる私に、彼女は
「時間だから帰るね。また札幌に来たら電話ちょうだいね!」
仕事を終えた普通の会社員のように彼女はドアを開け笑顔で帰っていった。
――出張から帰ってきても、正直、彼女との出会いの余韻から解放されないでいた。学生時代や社会人になっても、合コンやナンパをこよなく愛していた私にとって「女にハマル!?」なんてあり得ないと思っていた。
なぜなら、その時代、私が出会った大抵の女の子は、私自身ではなく会社のブランドや年収・出身大学・車の車種等々を最優先して最後の最後に、やっと私の人となりを判断材料としていたからだ。しかし、予想外というか運命的出会いというか…
「もういちど会いたい」
この思いは、男の欲望として抱きたい感情ではなく、何か言葉では言い表せないほどの高ぶりにも似た恋愛感情?
間もなくして、私は札幌支社へと移動が決まり、抑えられぬ恋愛感情を胸に、彼女と再会することとなる。